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コラム
Volume
31

デザインやブランディングを成功させる正しい投資とは

Web制作、ロゴ制作などのブランディングをできるだけ安く済ませたいと考える経営者が多いように見受けられますが、長期的にみるとどうでしょうか。安価な、質の低いデザインによる、企業のブランドイメージ棄損などのリスクについて考えてみたいと思います。

社会の成熟、変化により、良いモノを作れば売れる時代ではなくなりました。現在では、デザインやブランディングが企業の価値を左右し、成功には欠かせない要素となりました。Apple、ダイソン、スターバックス、無印、マツダ、BALMUDAなど、デザインによって成功している企業を見れば一目瞭然です。

しかしながら、多くの中小企業経営者は、デザインやブランディングをできるだけ安く済ませたいと考えがちです。確かに、一見すると、限られた予算の中でコストを削減することは理に適っているようにも見えます。ただ実際には、企業成長の阻害要因となるリスクを伴うことを理解しておく必要があります

質の低いデザインが与える影響

Webサイトやロゴは、顧客との最初のタッチポイント(顧客接点、顧客と企業との接点)である場合も多く、第一印象を形成する役割も担っています。デザインの質が低いと、信頼形成ができず、その時点で顧客を失うリスクが高くなります。特に、オンラインショップやある程度以上の高価格帯の取引を行う場合は、このタイミングで離脱されてしまう可能性が高まります。

また、質の低いデザインは製品やサービスの品質の低さを想起させてしまうため、信頼性やブランドイメージを損ねてしまうリスクも生じます。ロゴはよく「企業の顔」といわれますが、ブランドイメージとは、そのブランドの価値を反映するものであり、質の低いロゴを使うことで、企業そのものが信頼できないという印象を与えかねません。

長期的には、顧客ロイヤルティ(顧客忠誠度)にも影響を及ぼします。

投資対効果(ROI)

2-1. 質の高いデザインへの投資

質の高いデザインは、中小企業にとっては高い投資であることは間違いありません。しかし、長期間にわたりブランド認知度アップやブランドの印象の変化、顧客獲得など高い投資効果をもたらす可能性を持っています。また、時代や流行に流されることなく、長期に渡って効果を得られることから、中長期的には投資対効果に優れているということができます。

2-2. 質の低いデザインへの投資

対して、質の低い安価なデザインを求めた場合、初期費用を抑えることはできるものの、時代の変化とともにデザインの古臭さを感じるようになるなど、ロゴの調整や作り直しといったリブランディング(ブランドの見直しや再構築)の必要に迫られてしまいます。ブランドとしての一貫性を損なうリスクや、リブランディングにかかる費用的・時間的コストなど、中長期的視点ではデメリットの方が目立つという事態に陥るリスクを孕んでいます

実際、安価なところで作ってもらったものを数年使ってはみたものの、「やっぱり作り直したい」と私どもにロゴやブランディングについてご相談いただくお客様もいらっしゃいます。この場合は、視点を変えればこれはこれでひとつの学びだということもできますが、それでも数年間のロスと、余計なコストが発生しています。

一方でこれは、まだよい例とも言えます。もし作り直しの必要性に気づかずに放置状態が続き、ブランドイメージが棄損されてしまうと、建て直しに多大な労力がかかることは避けられません。総じて、自らブランドイメージの棄損に気づくには時間を要しますので、そのダメージは計り知れません。

質の高いデザインのメリット

質の高いデザインは、視覚的に印象深く、顧客に信頼感や品質の高さを感じさせ、ブランドイメージを高めることが期待できます。また、一貫性のあるメッセージ性により、顧客ロイヤルティを高めることにもつながります

コモディティ化(均質化、他の商品との性能や品質等の差がなくなること)が進んだ現在では、デザインは差別化や付加価値を高めるための手段として重要性を増しています。デザインやブランディングにお金を使わなくても、新しい商品を開発すれば解決する問題と考える人もいるかもしれません。しかし、模倣されるスピードが年々速くなっていることは明らかです。

また、新商品開発 × ブランディングという組み合わせができると理想的かもしれませんが、中小企業の限られた資金の中で新商品開発を中心に据えるのはなかなか難しいのではないでしょうか。

質の高いデザインにより、「この商品を選べば間違いなさそうだ」と感じてもらい、購入した後の暮らしや気持ちの変化、満足感などのイメージを抱いてもらうことは、顧客獲得とLTV(Life Time Value、顧客生涯価値)を高めるため欠かせない手段となっています

デザイナーが考える「スモールスタート」

とはいえ、長く続いたビジネスでのリブランディングとは異なり、事業立ち上げの際にブランディングに高額を投資するというのは確かに難しいでしょう。

ビジネスによって、どこに投資するかというのは変わってくると思いますが、一つの考え方として、後で変更しにくいものには優先的に投資し、後で変更しやすいものは費用を抑えるとよいのではないでしょうか。

例えば、ロゴは一度作成してしまうと、名刺や各種書類、社屋や店舗等にも使用されるため、変更するとなるとすべて作り直しになります。そのため、流行に左右されず長く使えるものが、結果的にコスト削減につながります。

パンフレットなどの印刷物も、一度にまとまった部数を印刷した方が費用を抑えられるため、長く使うものであれば投資の価値があると考えます。

逆に、短期間しか使用しないオープン時のチラシはコストが削りやすいところです。
また、比較的変更が容易なWebサイトは、最初は1ページだけにする、更新機能などは省いてシンプルな作りにし、段階的に機能追加をして完成度を上げていくなど、スモールスタートもしやすい部分です。

私どもシンカーデザインでは、どのようにご予算を振り分けるかについてもご提案いたしますので、ぜひご相談ください。

まとめ

ココナラ、ランサーズなどのようなクラウドソーシングは、安くつくかもしれませんが、初心者からある程度のスキルを持つ方まで玉石混合です。スキルレベルを見分けられるだけの自信があるのであれば、それでもよいかもしれません。

しかし、多くの場合、見極めることは困難なのではないでしょうか。現在では、さまざまなアプリで簡単にデザインらしきことができるようになっています。ただ、残念ながらデザインらしきことと「デザイン」は別物です。パッと見てよくできていそうに見えるかもしれませんが、多くの場合、プロのデザイナーからすればそれはデザインではありません。

成功している企業は、デザインやブランディングを競争力向上の手段としています。
そして、別の記事でも述べましたが、少ない投資で大きなリターンが得られることはまずありません。

経営者自信がデザインの価値を理解し、質の高いデザインに適切な投資をすることは、もはや企業の経営には不可欠といってもいいでしょう。よくわからないからと後回しにしたり、安易に安く済ませることは、事業の成長を阻害するばかりでなく、事業の持続そのものを危ういものにしかねません

デザインに対してアレルギー反応を示すのではなく、質の高いデザインや信頼できるデザイナー・制作会社と連携していくことで、持続的なビジネスの成長の実現につなげていくことが可能になることでしょう。